東京大学が無料公開した「思考の解像度を上げる」全118スライド – 深さ・広さ・構造・時間の4軸フレームワーク

@MacopeninSUTABA(かずなり|生成AI×ビジネスハック)氏のポストが話題です。

東京大学が無料公開した「思考の解像度を上げる全ノウハウ」が凝縮された資料が有益。「解像度が低い=深さ・広さ・構造・時間の不足」という定義から、分析を劇的に深めるテクニック、そして「実装可能」なレベルまで鮮明にする方法まで、余すことなく学べる。

東京大学 FoundX ディレクター・馬田隆明氏が SpeakerDeck で公開しているスライド「解像度を上げる」は、累計 570 万回以上閲覧された「神スライド」として知られています。本記事では、このスライドの核心である「4つの視点」と「48の実践パターン」を掘り下げます。

「解像度」とは何か

ビジネスの現場で「あの人は解像度が高い」という表現を耳にすることが増えました。馬田氏はこの「解像度」を次のように定義しています。

顧客の状況や課題、次に取るべきアクションが鮮明に見えている状態

逆に、解像度が低いとは「思考や事実認識が粗い」状態です。つまり、課題を構成要素に分解できておらず、各要素の理解が浅い状態を指します。

重要なのは、解像度は単に「知識量が多い」ことではないという点です。情報を持っていても、それを構造化し、深く掘り下げ、時間軸で捉えられなければ、解像度は低いままです。

4つの視点

スライドの中核をなすのが、解像度を構成する 4 つの視点です。

視点問い低い状態高い状態
深さなぜそうなるのか?表面的な症状だけを見ている根本原因まで掘り下げている
広さ他にどんな可能性があるか?1つのアプローチしか検討していない複数の視点・手法を比較している
構造要素間の関係はどうか?情報がバラバラで整理されていない因果関係と優先順位が明確
時間過去から未来へどう変化するか?現在のスナップショットだけ経時変化とプロセスを捉えている

馬田氏が繰り返し強調するのは、4 つの視点のうち最も不足しがちなのは「深さ」であるという点です。多くの人は課題を広く浅く捉えることはできても、1 つの課題を徹底的に掘り下げることが不十分だと指摘しています。

問題と解決策の両面で解像度を上げる

このフレームワークのもう一つの特徴は、解像度を問題側解決策側の 2 軸で捉える点です。

          問題の解像度        解決策の解像度
深さ      根本原因の特定      実装の具体性
広さ      顧客セグメントの網羅  代替手段の検討
構造      課題間の因果関係     アーキテクチャ設計
時間      課題の変遷          ロードマップ

ビジネスで価値を生むには、「顧客の課題」と「それに対応する解決策」の両方の解像度を上げる必要があります。どちらか一方だけでは不十分です。

48 の実践パターン

書籍版では、4 つの視点ごとに具体的なアクションが「型」として整理されています。「情報 × 思考 × 行動」を組み合わせた 48 のパターンです。代表的なものを紹介します。

深さを上げる型

内容
言語化理解していることを文章に書き出し、曖昧さを炙り出す
Why so? の反復事実から「なぜ?」を繰り返し、インサイトを導出する
顧客インタビュー仮説を持って直接ヒアリングし、想定とのギャップを見つける
現場への没入データだけでなく、実際の利用シーンを体験する
語彙と知識の拡張読書や学習で、言語化の精度を高める

広さを上げる型

内容
類似事例の調査他業界・他国の類似ケースから着想を得る
ペルソナの拡張ターゲット外の顧客像を意図的に検討する
逆説の検討自分の仮説の反対が正しい場合を想像する

構造を上げる型

内容
分割と比較大きな塊を意味のある単位に分け、比較する
可視化データをグラフ化し、付箋で関連要素をグルーピングする
抽象と具体の往復具体事例から法則を抽出し、別の具体に当てはめる

時間を上げる型

内容
トレンド分析過去の推移から未来の方向性を読む
プロセスの分解顧客の行動を時系列で書き出し、ボトルネックを特定する
未来からの逆算理想状態を描き、現在からのギャップを明確にする

解像度を上げるための 3 つの原則

馬田氏は、4 つの視点に加えて、解像度を上げるための根本的なアプローチとして 3 つの要素を挙げています。

  1. 情報を集める – 読書、インタビュー、データ収集で素材を揃える
  2. 思考する – 集めた情報を分析・構造化・言語化する
  3. 行動する – 仮説を実際に試し、フィードバックを得る

この 3 つはサイクルとして回す必要があります。情報だけ集めても行動しなければ解像度は上がらず、行動だけしても思考で整理しなければ学びが蓄積されません。

エンジニアにとっての「解像度」

このフレームワークはスタートアップ文脈で語られることが多いですが、エンジニアの日常業務にも直結します。

場面解像度が低い状態解像度が高い状態
バグ修正「なんか動かない」で止まる再現手順・原因・影響範囲が特定できている
要件定義「こんな機能がほしい」ユーザーストーリー・エッジケース・制約が明確
設計「とりあえず動くもの」拡張性・保守性・パフォーマンスのトレードオフを理解
レビュー「LGTM」コードの意図・代替案・リスクを指摘できる

特にソフトウェア開発では、「深さ」と「構造」の解像度が品質に直結します。「なぜこの設計にしたのか」を 3 段階以上掘り下げられるかどうかが、ジュニアとシニアの大きな違いとも言えます。

スライドと書籍の関係

項目スライド(SpeakerDeck)書籍(英治出版)
価格無料1,980 円(税込)
ページ数118 スライド320 ページ
内容フレームワークの概要と図解48 の型 + 詳細な解説 + 事例
更新2023 年 4 月に大幅更新2022 年 11 月出版
対象起業家・ビジネスパーソン全般若手ビジネスパーソンを含む幅広い層

スライドだけでもフレームワークの全体像は把握できますが、書籍では各パターンの背景にある理論と具体的な実践手順が詳しく解説されています。

著者・馬田隆明氏について

馬田隆明氏は東京大学 FoundX のディレクターを務めています。FoundX は東京大学の起業支援プログラムで、卒業生向けのスタートアップ支援を行っています。

馬田氏はマイクロソフトで Visual Studio のプロダクトマネージャーやスタートアップ向けテクニカルエバンジェリストを経験した後、2016 年に FoundX に参画しました。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は「居場所」を選ぶ』『未来を実装する』などがあります。

FoundX では起業家向けのスライド資料を多数無料公開しており、「解像度を上げる」以外にも、スタートアップの各フェーズで役立つ資料が揃っています。

まとめ

  • 「解像度」とは知識量ではなく、課題と解決策を鮮明に捉えている状態を指す
  • **4 つの視点(深さ・広さ・構造・時間)**で自分の思考の偏りを診断できる
  • **最も不足しがちなのは「深さ」**であり、Why so? の反復や現場への没入が有効
  • 問題と解決策の両面で解像度を上げることが、ビジネスの価値創出につながる
  • 情報 × 思考 × 行動のサイクルを回すことが、解像度向上の根本的なアプローチ
  • エンジニアの実務にも直結しており、設計・レビュー・要件定義の質を左右する
  • スライドは無料で公開されており、118 枚で全体像を把握できる

参考