AI がゴールドマン・サックスのアナリストと同等の財務モデルを作成できるようになった。Claude を活用した 12 のプロンプトで、年収 15 万ドル(約 2,200 万円)相当の投資銀行業務を代替できるという話題が SNS で広がっている。本記事では、その背景と実際の活用方法を解説する。
背景: ゴールドマン・サックスと Anthropic の提携
2026 年 2 月、ゴールドマン・サックスは Anthropic と提携し、Claude を活用した AI エージェントの開発を開始した。Anthropic のエンジニアがゴールドマン内部に常駐し、会計処理やコンプライアンス業務の自動化エージェントを共同開発している。
ゴールドマンは Claude のコーディング以外の能力、特に大量のデータやドキュメントを解析しながらルールと判断を適用する能力に驚いたと報じられている。同行は、AI を活用してプロセスを高速化し、将来の人員増加を抑制する効率化を見込んでいる。
12 の Claude プロンプトとは
SNS で話題になっている「12 の Claude プロンプト」は、投資銀行やプライベートエクイティで使われる 47 の財務モデルを 12 の構造化プロンプトに集約したものだ。各プロンプトは以下の手法で構築されている:
- フェーズ分割: 段階的にモデルを構築
- XML 構造: 入力データを明確にラベル付け
- 検証ステップ: 計算結果の整合性チェックを内蔵
- 不確実性フラグ: 推定値と確定値を区別
- 明示的な出力フォーマット: 投資委員会向けの形式
主要なプロンプトカテゴリ
| カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| DCF(割引キャッシュフロー)バリュエーション | WACC(加重平均資本コスト)計算、ターミナルバリュー算定、3 フェーズ構築 |
| 3 ステートメント財務モデル | 損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の連動モデル、バランスチェック検証付き |
| M&A 希薄化/増厚分析 | 買収のアクリーション/ディリューション分析 |
| LBO(レバレッジド・バイアウト)モデル | ソース & ユース、負債構造、キャッシュスイープ、IRR(内部収益率)/MoM(投資倍率)計算 |
| 類似企業比較分析 | コンパラブルカンパニー分析、マルチプル算出 |
Claude の財務サービス機能
Anthropic は 2026 年に Claude の財務サービス向け機能を大幅に拡充した。
Claude in Excel / Google Sheets
2026 年 3 月時点で月額 20 ドルの Pro プランで利用可能。スプレッドシート内で直接 Claude を呼び出し、以下のような作業を自動化できる:
- DCF モデルビルダー: ゼロから DCF モデルを構築し、過去の財務データを取得して企業価値を計算
- 財務レポート自動化: FP&A(財務計画・分析)やレポーティングの定型作業を効率化
- データ分析: 大量の財務データからインサイトを抽出
コスト効率
Claude Sonnet は 100 万トークンあたり約 3 ドルで利用でき、1 回の DCF バリュエーション実行コストは 1 ドル未満だ。従来の投資銀行アナリストの人件費と比較すると、圧倒的なコスト差がある。
実用上の注意点
ハルシネーションへの対応
比較テストでは、Claude は最も「投資銀行らしい」出力を生成すると評価された一方、過去データのハルシネーション(捏造)が一部で確認されている。財務モデルでは数値の正確性が最も重要であるため、以下の対策が推奨される:
- 入力データは必ず公式ソースから提供する: Claude にデータ取得を任せず、SEC Filing や Bloomberg のデータを直接入力する
- 計算結果のクロスチェック: バランスシートの貸借一致、キャッシュフローの整合性を必ず検証する
- 段階的な構築: 一度にモデル全体を生成させるのではなく、フェーズごとに出力を確認する
機関投資家レベルの業務にはまだ課題
ヘッジファンドの実務者からは「機関投資家向けのユースケースにはまだ準備不足」という声もある。現時点では以下の用途に適している:
- 初期ドラフトの高速作成: アナリストが 1 日かかるモデルを 30 分で作成
- 学習・教育: 財務モデリングの手法を理解するための教材として
- 中小企業の財務分析: 専門のアナリストを雇えない企業の意思決定支援
まとめ
AI による財務モデリングは急速に進化しており、ゴールドマン・サックスのような大手金融機関も本格導入を開始している。12 の構造化プロンプトを活用すれば、個人でもプロフェッショナルレベルの財務分析にアクセスできる時代が到来した。ただし、ハルシネーションリスクを理解し、必ず人間による検証を組み合わせることが重要だ。