Google のシニア AI プロダクトマネージャー Shubham Saboo 氏が、OpenClaw エージェントを 40 日間運用した経験から導き出した「マークダウンファイル駆動のエージェント運用スタック」について紹介する。モデルを変えず、蓄積されたマークダウンファイルだけでエージェントが成長していくというアプローチだ。
コアコンセプト:マークダウンファイルが成長エンジン
このスタックの最大の特徴は、モデル自体は変わらないという点にある。エージェント間の違いは「蓄積されたマークダウンファイル」にある。データベースもオーケストレーションフレームワークもメッセージキューも不要で、ディスク上のマークダウンファイルがすべてのインテグレーション層として機能する。
3 層スタック構造
エージェントの設計は以下の 3 層で構成される:
1. Identity 層(アイデンティティ)
SOUL.md がセッション起動時に毎回読み込まれる。ここにはエージェントの人格、役割、原則、関係性が定義される。
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TV キャラクターの名前をエージェントに付けるのが Saboo 氏のテクニックだ。Claude の学習データにキャラクターの性格が含まれているため、「Dwight Schrute のエネルギーで」と伝えるだけで、徹底的で真剣な仕事ぶりが期待できる。
2. Operations 層(行動ルール)
AGENTS.md でセッション起動ルーティンとメモリ管理ルールを定義する。運用開始から約 1 週間後に作成するのが推奨される。
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3. Knowledge 層(記憶・ログ)
MEMORY.md は約 2 週間の運用後に初期化する。日次ログをレビューし、繰り返し発生する修正パターンを恒久的なエントリとして蒸留していく。
メモリシステムの 3 階層
| 階層 | 内容 | 更新頻度 |
|---|---|---|
| 長期記憶 | キュレーションされた知見 | 必要に応じて |
| 日次ログ | 日々の運用記録 | 毎日 |
| 共有知識 | エージェント横断のナレッジ | フィードバック時に自動伝播 |
フィードバックが全エージェントに自動的に伝播される仕組みにより、1 つのエージェントでの学びが組織全体に活かされる。
エージェント間の協調
複数エージェントの連携は「1 つが書き、他が読む」という原則で動作する。API 連携は不要で、ファイルベースの協調を行う。
agent-writer/ → shared/output.md に書き込み
agent-reader/ → shared/output.md を読み取り
重要なのはスケジュール順序だ。エージェントの実行順を適切に設計することで、一貫性のあるアウトプットが得られる。
段階的な導入ロードマップ
| フェーズ | 期間 | やること |
|---|---|---|
| Day 1 | 初日 | Identity ファイル(SOUL.md)を作成 |
| Week 1 | 1 週目 | AGENTS.md でエージェントルールを追加 |
| Week 2 | 2 週目 | MEMORY.md でメモリシステムを初期化 |
| Week 3 | 3 週目 | 2 つ目のエージェントを追加、ファイルベース協調 |
| Week 4 | 4 週目 | 自己修復メカニズムを導入 |
最初のステップとしては、自分の最も反復的な日常タスクを選び、1 つの cron ジョブをセットアップして走らせることが推奨される。
まとめ
このアプローチの本質は、エージェントの改善が会話だけで起こる点にある。プロンプトの調整もモデルの変更も不要で、マークダウンファイルの蓄積がそのままエージェントの成長になる。OpenClaw の設計思想であるファイルベースのアーキテクチャを最大限に活かした、実践的な運用パターンと言える。