メルカリ(4385)の2026年通期決算が発表された。「古着を売るアプリ」として始まったメルカリが、今や決済・与信・海外展開まで手がける巨大リサイクル金融プラットフォームに変貌しつつある。本記事では、決算の主要数値・Fintech成長の実態・財務リスクの3点を投資家視点で読み解く。
主要財務ハイライト
| 指標 | 実績 | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,672億円 | +16% |
| コア営業利益 | 348億円 | +74% |
| 営業利益 | 345億円 | +69% |
| 純利益 | 194億円 | +65% |
売上の+16%成長よりも、利益の伸び率が圧倒的に高い。コア営業利益(株式報酬費用などを除いた調整後営業利益)が+74%というのは、「まだ成長フェーズ」と見なされていた会社が一気に利益体質へ転換してきた証拠だ。赤字ベンチャーと呼ばれた時期は完全に過去のものになった。
通期予想も上方修正され、売上2,200億円以上・コア営業利益400億円以上が射程圏内に。
国内Marketplace:「みんな売りすぎ・買いすぎ問題」が継続
国内MarketplaceのGMV(流通総額)は9,394億円(+11%)。1兆円の大台が見えてきた。
- エンタメ・ホビー分野が好調。オタク層の財布がメルカリを支える構図
- 「家の不用品がまだまだ金になる」という命題は引き続き有効
- ただし「売りすぎ・買いすぎ問題」(つまり過剰取引による品質低下)は継続課題
国内の出品・購入ユーザー数が増えるほどGMVが伸びる構造は安定しており、フライホイールが回り続けている。
Fintech事業:財布の中までメルカリ領土化
Fintech売上は+27%と高成長。メルカードとあと払い(BNPL)が牽引役だ。
- メルカード(クレジットカード)の利用拡大
- あと払いの浸透で「フリマの支払い→メルカリ金融」の導線が完成
- 債権残高3,281億円、+45%で急増。貸付ビジネスのスケールアップ
- 回収率99.4%という驚異的な数字。フリマ取引履歴を活用した与信モデルが機能している
フリマで獲得した決済データ・評価データを与信に転用する発想は独自の競争優位性だ。銀行や消費者金融にはない「売買履歴という行動データ」が武器になっている。
米国事業:ついに黒字化
長年の課題だった米国事業が黒字に転じた。
- US GMV:602百万ドル(+10%)
- USセグメント利益:11.8億円(前年は赤字)
- 海外への長年の投資がついてきた格好
「アメリカで燃やした金が少し帰ってきた」段階ではあるが、黒字化自体が一つのマイルストーン。今後の拡大ペースが焦点になる。
リスク:膨らむ債権と借入
業績は好調な一方、バランスシートは急拡大している。
- 資産:6,737億円
- 負債:5,532億円
- Fintechが伸びるほど債権残高が増え、資金調達(借入)も増加
- 営業CF:マイナス192億円。債権増加で現金が一時的に吸われる構造
回収率99.4%は現時点では優秀だが、景気後退や信用リスクの高まりがあれば、この比率が崩れる可能性がある。便利さの裏で信用リスク管理に失敗すれば、財務が急速に悪化するシナリオは常に意識しておきたい。
配当は0円:「まず成長にポチる」スタンス
配当は今期も0円。株主還元より成長投資を優先する姿勢は一貫している。
Fintech拡大・海外展開・新事業への投資を継続するフェーズであり、キャッシュを社内に留めておく判断は合理的だ。長期保有派にとっては「成長の果実を複利で享受する」戦略になる。
まとめ:中古品アプリから金融インフラへ
メルカリはもはや「フリマアプリ」ではない。決済・与信・海外マーケットプレイスを統合した「巨大リサイクル金融マシン」だ。
業績モメンタムは強く、Fintechの与信モデルは独自性が高い。一方で、Fintech拡大に伴う債権リスクと借入増加は、今後の最大の注目点になる。「フリマで客を集めて、金融で利益を盛り、米国黒字化まで決めたけど、次は貸した金をちゃんと回し続けられるか試される会社」——これがメルカリの現在地だ。
本記事は X(旧Twitter)の @kiokunir 氏による決算要約ツイートをもとに構成しています。