BASEが打ち出した「初期費用0円・月額0円」のECプラットフォームは、2012年当時の業界常識を覆すものだった。なぜそのモデルが可能だったのか。その背景にはリアルな現場課題を直視した、シンプルな逆張り戦略があった。

BASEの原点 — 「高すぎる」を解決する

BASEの創業者・鶴岡裕太さんがネットショップ作成サービスを作ろうと思ったきっかけは、大分で洋品店を営む母親が「ネットショップを開きたい」と言ったことだった。しかし既存のEC構築サービスには初期費用数十万円・月額数万円の壁があり、個人商店には手が届かなかった。

ここで重要なのは、このきっかけが「崇高なビジョン」ではなく、身近な人の具体的な不満から始まっている点だ。

  • 世界を変えたい → ❌
  • 革新的なSaaS → ❌
  • IPOしたい → ❌(少なくとも初期は)

あったのは「非エンジニアでもECを作れるようにしたい」という、ごく素朴な動機だった。

「初期費用0円・月額0円」を可能にした逆張り

当時のEC構築市場の相場は、初期費用数十万円・月額数万円が当たり前だった。BASEが打ち出した「初期費用0円・月額0円」は、競合にとって信じがたいモデルだったはずだ。

BASEは商品が売れたときにのみサービス利用料(3%)と決済手数料(3.6%+40円)が発生する収益モデルを採用した。「ユーザーが稼いだときだけ一緒に稼ぐ」という構造だ。

提供側はリスクを取ることになるが、ユーザーには「失敗してもタダ」という参入障壁の除去をもたらした。これが個人商店・スモビジへの一気の普及を後押しした。

受託→プロダクトという転換パターンの普遍性

「まず受託でキャッシュを稼ぎ、そこからプロダクトへ転換する」というパターンは、多くの日本のスタートアップが実践している。

  • チームラボ(2001年創業): 初期はWebサイト制作などの受託開発を主力に据えながら事業基盤を固めた
  • SmartHR: 前身のKUFUが「受託70%・自社サービス10%」という比率でスタートし、SaaSへと転換した

「まず受託でキャッシュを稼ぐ」という選択肢は、決して逃げではない。現場で繰り返す作業の中にこそ、プロダクトの種がある。

現場の「うんざり」は設計図になる

スタートアップの教科書には「大きなビジョンを持て」と書いてある。しかし現実に強いプロダクトを作るのは、現場の「これ、なんとかならないか」という感覚だ。

自分の親が直面した不便、繰り返される問い合わせ、毎回同じ設定をゼロからやり直す徒労感——等身大の課題を解決するプロダクトは、ユーザーインタビューを重ねて作られた「仮説」とは別の強さを持つ。

あらゆる現場の「うんざり」は、プロダクトの設計図になりうる。


Source: X (Twitter) @RrrrrKayuy620