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IoT開発ボードの使い分け完全比較 — M5Stack / Raspberry Pi / Arduino / ESP32 / Wio

M5Stack は画面やバッテリーが最初から一体化していて非常に便利だ。しかし IoT ソリューションの現場では、目的(試作なのか、工場での本格運用なのか、大量生産なのか)に合わせて、他にもさまざまな種類の基板(マイコンボードやシングルボードコンピューター)が使い分けられている。

この記事では、その定番となる M5Stack を基準点に、他の 4 カテゴリの基板(Raspberry Pi / Arduino / ESP32 / Wio シリーズ)を、それぞれの特徴・用途・現場での運用スタイルとともに整理する。

全体像:フェーズと機能で使い分ける

IoT の基板選びは、大きく分けて 2 つの軸で考えると整理しやすい。

代表的な基板をこの 2 軸にマッピングすると、次のような位置関係になる。

IoT基板を「試作↔量産」「シンプル・省電力↔高機能・Linux」の2軸で配置した使い分けマップ。左上寄りにM5Stack、右上にRaspberry Pi、左下にArduino、右下にESP32単体チップ、中央にWioシリーズを置き、試作から量産へ向かう流れを矢印で示した図

「画面でパッと状態を見たいから M5Stack」「AI で画像認識させたいから Raspberry Pi」といったように、作りたいソリューションの要件に合わせて選ぶのがポイントだ。以下、それぞれを詳しく見ていく。

1. Raspberry Pi — Linux が動く小さなパソコン

IoT 開発において、M5Stack と並ぶ超定番のシングルボードコンピューター(SBC)が Raspberry Pi(ラズベリーパイ、通称「ラズパイ」)だ。M5Stack が「電子回路を制御するチップ(マイコン)」なのに対し、ラズパイは 「Linux OS が動く小さなパソコン」 という位置づけになる。

処理能力が必要な場面、特に カメラ映像の解析やゲートウェイ(複数のセンサーを束ねてクラウドへ送る中継役) ではラズパイが選ばれやすい。

2. Arduino — プロトタイピングの元祖

Arduino(アルドゥイーノ)は、世界中で使われている電子工作・IoT プロトタイピングの元祖ともいえるマイコンボードだ。

3. ESP32 — M5Stack の中身そのもの

実は M5Stack の中身そのもの が、Espressif Systems 社の Wi-Fi / Bluetooth 内蔵マイコンチップ ESP32 だ。

つまり 「M5Stack で試作 → ESP32 で量産」 という流れは、IoT 製品開発の典型的なパターンになっている。マイコン(プログラムに従って電子回路を制御する半導体)としての実体は同じなので、試作で書いたコードの多くをそのまま活かせるのが利点だ。

4. Wio LTE / Wio Terminal — 通信内蔵の IoT 特化型ボード

Seeed Studio が手がける Wio シリーズ は、IoT に特化した開発ボードシリーズだ。

Wi-Fi の届かない屋外や、電波環境の限られた場所でのセンサー計測では、通信モジュールが最初から載っている Wio シリーズが扱いやすい。

セルラー以外の選択肢:スマホ中継によるクラウドソース測位

Wio シリーズは「基板自身が LTE で通信する」方式だが、位置情報の追跡に限れば、LTE も GPS も積まずに、通りすがりの他人のスマホに位置を中継させるという選択肢がある。Apple の AirTag と同じ「クラウドソース測位(crowdsourced / offline finding)」と呼ばれる仕組みだ。

仕組み

タグが BLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンを発信し、たまたま近くにいた他人のスマホがそれを拾って、匿名・エンドツーエンド暗号化で位置をクラウドへ報告する。持ち主だけが地図で位置を確認できる。タグ側にセルラーも GPS も不要なのが最大の特徴だ。この中継役を担う巨大なネットワークが 2 つある。

ネットワーク中継する端末規模サードパーティ対応
Apple 「探す」(Find My)iPhone / iPad / Mac数億台MFi の Find My network accessory program(“Works with Apple Find My” バッジ)
Google Find My Device / Find HubAndroid 9+ 端末10億台以上(2024年4月開始SDK / 対応チップで実装可

ESP32 で自作できる

面白いのは、この記事で扱った ESP32 がそのままタグのハードウェアになる点だ。

量産・製品化する場合は、Nordic Semiconductor や Renesas が Apple Find My と Google Find My Device の両対応 BLE SoC + SDK を提供しているので、そちらを使うのが現実的だ。

Wio(LTE) 方式との使い分け

Wio(LTE)=セルラー直結AirTag方式=スマホ中継
消費電力・コストSIM + 通信料、電力も必要超低消費電力、通信料ゼロ
位置の更新リアルタイム・任意タイミング人(スマホ)が通ったときだけ
圏外・無人地帯電波があれば取得可人がいない山奥・農地ではほぼ取れない
送れるデータセンサー値など任意基本的に位置情報のみ

つまり「人通りのある場所で、モノや資産の紛失・置き忘れを追う」用途なら AirTag 方式が圧倒的に低コスト。一方で「無人の農地の温湿度をリアルタイムに送る」ような任意のセンサーデータや、人がいない場所の計測は Wio(LTE) の領域になる。位置情報だけなら中継、センサーデータも送るならセルラー、という切り分けだ。

⚠️ Apple / Google は現在、見知らぬタグが付いて回っているとストーカー対策として警告を出す仕組みを相互に導入している。自作タグでこの検知を回避するような使い方は避けるべきで、正規の “Works with Find My” 準拠での実装が推奨される。

具体的な用途例で見る使い分け

「試作向き/量産向き」という抽象的な軸だけではイメージしにくいので、実際に各基板でどんなソリューションが作られているのか、代表的な事例を見てみよう。

M5Stack — 製造現場の「見える化」を素早く

画面付きで試作が速い M5Stack は、工場の現場改善(カイゼン)ツールとして多く使われている。

Raspberry Pi — 映像解析とゲートウェイ

Linux とパソコン並みの処理能力を活かし、映像や複数センサーをまとめて扱う「頭脳役」として使われる。

Arduino — シンプルなセンシングを省電力で

画面や通信を欲張らず、決まった動作を確実に・省電力でこなす用途に向く。

ESP32 — Wi-Fi 内蔵の超省電力センサー、そして量産へ

Wi-Fi/Bluetooth 内蔵で安価なため、電池で長期間動く自作 IoT センサーの定番になっている。

Wio シリーズ — Wi-Fi が届かない屋外を「セルラーで」

LTE を最初から積んでいるため、Wi-Fi の届かない屋外・遠隔地のデータ計測で威力を発揮する。

まとめ:IoT基板の選び方と使い分け早見表

大まかには、以下のような基準でエンジニアや企業は基板を選んでいる。

基板の種類強み・特徴向いている用途
M5Stack画面・ケース付きで試作が最速画面が必要な社内ツール、素早い試作
Raspberry PiLinux が動き、高度な処理や AI が得意カメラ映像解析、ゲートウェイ化
Arduino安価で省電力、拡張シールドが豊富試作開発(PoC)、教育・実験
ESP32安価・小型でカスタマイズ性が高いセンサーデータ送信、量産製品への組み込み
Wio シリーズ最初から通信機能がついていて扱いやすい屋外や電波のない場所でのセンサー計測

IoT の基板は「どれが優れているか」ではなく「作りたいソリューションの要件に合っているか」で選ぶものだ。試作段階では M5Stack や Arduino で素早く検証し、本格運用・量産の段階で Raspberry Pi や ESP32 へ移行する——という流れを頭に入れておくと、プロジェクトのどのフェーズでどの基板を手に取ればよいかが見えてくる。



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