概要
Subquadratic Sparse Attention(SSA)は、標準 Transformer の O(N²) アテンションを克服するために設計された 疎なアテンション機構。各クエリトークンに対して「実際に重要な k 位置」だけを動的に選び、その部分集合のみアテンション計算を行う。k が N に対して十分小さければ計算量は O(N × k) でほぼ線形に近づく。
二次スケーリング問題
- 2017 年の Transformer 論文以降、ほぼ全ての主要 LLM はアテンション計算が
O(N²)でスケールする - コンテキスト長 N を大きくすると、計算量・メモリ・コストが指数的に増加
- 結果として現実の長文処理では RAG・チャンク化・要約ループといった迂回策が必須となっていた
SSA の発想
- 全 N 個と全 N 個を比較するのではなく、各クエリで 「本当に重要な k 個」を選択してから比較
- どの位置が重要かを判断する選択器の設計が肝
- うまく機能すれば、長文を「分割せずに一度に」扱える
SubQ における主張
- マイアミのスタートアップ Subquadratic が 2026 年 5 月に発表した LLM
- 1,200 万トークンのコンテキスト長、FlashAttention 比 52 倍高速、推論コスト $8(従来 $2,600) を主張
- Claude Opus 4.7 超えのベンチマーク結果も提示
- ただし技術レポートが現時点で未公開、独立検証もないため懐疑論あり
記憶の作り替えの系譜
疎化以外にも、Attention の「記憶」の持ち方は段階的に置き換えられてきた。位置づけを整理すると次のようになる。
| 方式 | 記憶の持ち方 |
|---|---|
| Full Attention | すべてを保持。KV キャッシュが増え続ける |
| スパース Attention(SSA) | 重要な k 位置だけに絞る |
| 線形 Attention | 固定サイズの状態に折りたたむ |
| DeltaNet | 足すのではなく「差分で直す」 |
| KDA(Kimi Delta Attention) | 「忘れ方」を細かく分ける |
実運用のモデルは一つの方式に賭けない傾向がある。Kimi K3 は KDA 69 層 + Gated MLA 24 層の二段構えで、固定状態の効率と全結合の表現力を併せ持たせている。Kimi Linear 論文では 100 万トークン文脈で KV キャッシュ 75% 削減・デコード約 6 倍が報告されているが、論文のモデルは総 48B で K3 とは規模が別である。
関連ページ
- Context Compression — 別アプローチでのコンテキスト圧縮
- Context Rot — 長文化に伴う劣化問題
- Kimi K3 — KDA を実装したモデルの詳細