ソニー α7R VI(ILCE-7RM6)の**カスタムモード(MR:登録呼び出し)**は、「いまの撮影設定を丸ごと保存しておいて、ダイヤルひとつで呼び戻す」機能です。考え方そのものは α シリーズで共通ですが、VI では枠の数・保存先・更新のしかたが変わりました。
とくに、α7R V までの記事や動画に出てくる「本体に 3 つ、メモリーカードに M1〜M4」という説明は、VI ではそのまま通用しません。この記事では公式ヘルプガイドをもとに、VI の実際の仕様で登録・呼び出し・編集の手順を整理します。
α7R V から変わった 5 点
先に、V 以前の解説と食い違うところをまとめます。
| 観点 | α7R V | α7R VI |
|---|---|---|
| 枠の数 | 本体 3(ダイヤル 1/2/3)+ カード 4(M1〜M4)= 7 | 本体のみ 10(MR1〜MR10)。ダイヤル「1」「2」は MR1・MR2 への近道で、別枠ではない |
| 保存先の選択 | [MR 登録/呼出メディア]でスロットを指定 | メニュー項目ごと廃止 |
| 呼び出しメニュー | [MR 撮影設定呼び出し]という独立項目 | [撮影モード]に統合 |
| 登録時のタイトル | なし | 入力が必須ステップ(英数記号 9 文字) |
| 呼び出し中の変更 | 再登録するしかない | [MR 自動更新]で自動反映できる |
以下、VI の仕様として順に見ていきます。
α7R VI の MR(登録呼び出し)の全体像
ポイントは 3 つです。
- 保存先は本体のみ。撮影モードごとに 10 個ずつ登録できる
- モードダイヤルで直接呼べるのは 2 つだけ(「1」「2」= MR1・MR2)。3 つ目以降はメニューかカスタムキー
- [MR 自動更新]が増えた。呼び出し中の変更を、登録内容へ自動で反映できる
MR 撮影設定登録の手順(5 ステップ)
事前に、登録したい状態までカメラを仕上げておきます。露出モード(P/A/S/M)、絞り、シャッタースピード、ISO 感度、AF エリア、ドライブモード、ホワイトバランス。「この被写体ならこう構える」という一式です。
- 本機の撮影設定を、登録したい状態にする
- MENU →[撮影]→[撮影モード]→**[MR 撮影設定登録]**を選ぶ
- 登録する撮影設定の内容を確認し、コントロールホイールの中央を押す
- 登録する撮影設定のタイトルを入力して[OK]を押し、[確認]を選ぶ
- 登録先の番号(MR1〜MR10)を選んで、コントロールホイールの中央で決定する
手順 4 のタイトル入力は、α7R V にはなかったステップです。英数字と記号で 9 文字まで、日本語は使えません。「LANDSCAPE」で 9 文字ちょうど、「PORTRAIT」で 8 文字なので、思っているより余裕はありません。後から変えたくなったら、同じ[撮影モード]グループにある[MR タイトル変更]で編集できます。
「MR1 を直して MR2 として保存」は安全か
MR1 を呼び出し、少しだけ変えて MR2 として保存したい、という場面があります。このとき「タイトルが MR1 のままだと、MR1 を上書きしてしまうのでは」と不安になりますが、その心配はありません。
保存先を決めるのは手順 5 の番号で、タイトルはその前に入れるラベルにすぎません。タイトルが MR1 由来のままでも、手順 5 で MR2 を選べば MR2 に入り、MR1 は元のままです。[MR タイトル変更]の説明も「タイトルを変更したい設定を選ぶ」となっていて、枠が主・タイトルが従の関係です。タイトルは識別キーではありません。
実害があるとすれば、MR1 と MR2 に同じタイトルが並んで見分けがつかなくなることです。タイトル入力が番号選択より前にあるのは、ここで書き換えさせるためと考えると腑に落ちます。
本当に上書きが起きるのは、[MR 自動更新]が[入]のときです。この設定では「呼び出したあとに変更した設定を、登録された撮影設定に自動で反映」するので、MR1 を呼び出して設定をいじった時点で MR1 が書き換わります。[MR 撮影設定登録]のメニューを開く前に終わっているため、番号選択で気をつけても手遅れです。
では「先に MR2 へ移ってから設定を変えればいいのでは」と考えたくなりますが、それでは目的を達成できません。MR2 に移動した時点で MR2 の設定が読み込まれるからです。ヘルプガイドの呼び出しページにも「撮影に関する設定を行ったあとで撮影設定の呼び出しを行うと、呼び出された値が優先され、最初に行った設定が無効になる場合があります」とあります。土台にしたかった MR1 の状態は、移動した瞬間に消えます。
したがって、既存の MR をベースに別の MR を作る使い方をするなら、[MR 自動更新]は**[切](初期値)のまま**にしてください。[入]は「1 つの MR を育て続ける」使い方には向きますが、「既存の MR を派生させる」使い方とは相性が悪い設定です。
なお、タイトル入力欄に既存のタイトルが初期表示されるかどうかと、[MR 自動更新]と枠の切り替えが同時に起きたときの挙動は、ヘルプガイドに直接の記述がありません。後者は[MR 自動更新]の定義と呼び出し時のご注意を組み合わせた推論です。行き先が番号で決まることは、手順の順序から確定しています。
MR の呼び出し方は 3 経路 — ダイヤル・メニュー・カスタムキー
α7R VI のモードダイヤルは AUTO / P / A / S / M / 1 / 2 / ✱ の 8 ポジションです。最後の「✱」はアスタリスク状の刻印で、公式な呼称は「(無効)」です。
ここで先に、間違えやすい点をひとつ。ダイヤルの「1」「2」は、10 枠とは別に用意された 2 枠ではありません。 MR1・MR2 への近道です。ヘルプガイドは「MR1、MR2 を呼び出す場合はモードダイヤルを希望の番号にする」「モードダイヤルを(無効)にした場合は、メニューで MR1〜MR10 を呼び出すことができます」と書いており、同じ 10 枠に入口が 2 通りあるという構造です。10 + 2 = 12 にはなりません。
α7R V は「ダイヤル 1/2/3 に対応する本体 3 枠」+「カードの M1〜M4」という本当に別枠の構成だったので、ここは V の感覚を持ち込むと取り違えます。
A. モードダイヤルの「1」「2」
それぞれ MR1、MR2 に直行します。いちばん速い経路ですが、ダイヤルから直接飛べるのはこの 2 つだけです。
B. モードダイヤルの「✱(無効)」
この位置は、露出モードの欄に「メニューで選択」と書かれています。ダイヤルでの選択をやめて、MENU →[撮影]→[撮影モード]から選ぶための、ダイヤル上のポジションです。ここに [MR1〜MR10(登録呼び出し)] が並ぶので、MR3 以降を使うにはこの経路になります。
C. カスタムキー
キーに[撮影モード切換]を割り当てると、押すたびに撮影モードを切り替えられます。使える条件は次のどちらかです。
- モードダイヤルが「✱(無効)」になっている
- [モードダイヤル操作設定]の[撮影モードダイヤル]が[メニューで設定]になっている
α7R V にあった[MR 撮影設定呼び出し]という独立したメニュー項目は、VI にはありません。呼び出し先は[撮影モード]に統合されています。V の解説を見ながら操作すると、ここで迷います。
撮影モードごとに 10 枠、それが 4 系統
MR の枠は、撮影モード(静止画/動画/スロー&クイックモーション/タイムラプス。以下「系統」)ごとに本体へ 10 個までです。合計 40 枠あり、系統をまたいだ共有はありません。
呼び出し手順の第 1 ステップが「静止画/動画/S&Q 切換ダイヤルで希望の撮影モードにする」であるのは、このためです。切換ダイヤルの位置で、参照される 10 枠が決まります。静止画用に作り込んだ MR1 と、動画用の MR1 は別物です。
静止画と動画で設定を分けたいだけなら、MR を使わずに済む道もあります。[静止画/動画独立設定](MENU →[セットアップ]→[操作カスタマイズ])です。次の 8 項目を、静止画と動画で別々の値に保てます。
- 絞り
- シャッタースピード
- ISO 感度
- 露出補正
- 測光モード
- ホワイトバランス
- ピクチャープロファイル
- フォーカスモード
MR の編集方法 — 同じ番号に再登録するか[MR 自動更新]を使う
登録内容を変更する方法は 2 つあります。
従来どおりの上書き — 変更したい MR を呼び出し、設定を直してから、もう一度[MR 撮影設定登録]で同じ番号を選んで再登録します。ヘルプガイドが案内しているのはこの方法です。
[MR 自動更新]を使う — MENU →[撮影]→[撮影モード]→[MR 自動更新]を[入]にすると、「呼び出したあとに変更した設定を、登録された撮影設定に自動で反映」します。メニューに戻らずに MR を育てられます。
この項目は初期値が[切]です。そして、この違いは運用の思想そのものを分けます。
- [切]のまま — MR は「基準」になります。現場でどれだけいじっても、次に呼び出せば元の設定に戻ります
- [入]にする — MR は「最新の自分」に追従します。反面、その場しのぎで上げた ISO や、一時的に変えた AF エリアまで焼き付きます
どちらが正しいということはありませんが、登録内容を安定させたいなら[切]のままが扱いやすいでしょう。
なお[MR 自動更新]は[撮影設定リセット]の対象なので、リセットすると[切]に戻ります。登録した MR の設定値自体はリセット対象外ですが、[MR タイトル変更]はリセット対象なので、タイトルは初期状態に戻る可能性があります。
[MR 自動更新]と[MR タイトル変更]は、α7R V のヘルプガイドには存在しない項目です。ただし他機種(α1 II など)での有無は確認していないので、「α7R V からの変更点」として読んでください。
露出モードを間違えて登録したとき
「MR1 を S(シャッタースピード優先)で登録してしまった。M(マニュアル露出)に直したい」というケースは、少し事情が特殊です。MR1 を開いて露出モードだけ差し替える、という操作は存在しません。
[撮影モード]メニューの選択肢を見ると理由がわかります。
おまかせオート/プログラムオート/絞り優先/シャッタースピード優先/マニュアル露出/フレキシブル露出モード(動画撮影時のみ)/MR1〜MR10(登録呼び出し)
「マニュアル露出」と「MR1」は同じリストに並ぶ排他の項目です。M を選んだ時点で MR1 から出ます。ダイヤルを「1」にしている間も同じで、M に回せば MR から出ることになります。露出モードは MR の中の一項目であると同時に、MR と同じ次元にある選択肢でもある、という二重性がここに出ています。
したがって、直し方は再登録一択です。
- モードダイヤルを M にして、登録したい状態に仕上げる
- MENU →[撮影]→[撮影モード]→[MR 撮影設定登録]
- タイトルを入力して[OK]→[確認]
- 登録先の番号で「1」を選ぶ
MR1 を事前に呼び出す必要はありません。番号 1 を選んだ時点で置き換わります。
ISO や AF エリアなど他の設定を作り込んでいて残したい場合は、MR1 を呼び出してからダイヤルを M に回し、その状態で MR1 に再登録する、という手が考えられます。ただしこれは公式に保証された挙動ではありません。露出モードごとに絞り・シャッタースピードを個別に記憶する仕様があるため、M に回した時点で M の値に戻る可能性があります。空き枠で試してから本番の枠に適用してください。
なお[MR 自動更新]を[入]にしてもこの件は解決しません。M を選ぶことが MR1 から出ることを意味する以上、自動更新の対象外になるからです。
メモリーカードへの MR 登録(M1〜M4)は α7R VI で廃止
ここが、V 以前の解説といちばん食い違うところです。
α7R V は「本体に 3 つ、メモリーカードに 4 つ(M1〜M4)」で、[MR 登録/呼出メディア]でスロットを選ぶ仕組みでした。α7R VI にはこの仕組みがありません。[MR 登録/呼出メディア]というメニュー項目自体が存在せず、呼び出し先も MR1〜MR10 だけです。3 + 4 = 7 だった枠が、本体のみの 10 枠に一本化されたと理解するのが正確です。
では、カードを介して設定を持ち出したいときはどうするか。別の機能に移りました。
[設定の保存/読込](MENU →[セットアップ]→[設定初期化/保存]→[設定の保存/読込])が、カード保存の受け皿です。MR の登録内容もこのファイルに含まれます。ただし制約があります。
- 対象はスロット 1 のみ(変更できません)
- 1 枚のカードに保存できる設定ファイルは 10 個まで
- 型名が異なるカメラの設定は読み込めません。同じ型名でも、本体ソフトウェアのバージョンが違うと読み込めない場合があります
- 撮影モードが MR(MR1〜MR10)になっていると操作できません。MR 以外のモードに変えてから操作します
最後の 1 点は、実際に引っかかりやすい落とし穴です。「MR を保存しておこう」と思ってダイヤルを「1」にしたまま操作すると、メニューが選べません。
[MR 撮影設定登録]と[カスタム撮影設定登録]の違い
上の図の中央にある[カスタム撮影設定登録]は、MR とは別の機能です。名前が似ていますが、性格が正反対です。
| 観点 | [MR 撮影設定登録] | [カスタム撮影設定登録] |
|---|---|---|
| 何を保存するか | 撮影に関する設定を広くひとまとめに | 露出、フォーカス設定、ドライブモード(セルフタイマー以外)、連写速度ブースト、シャッター方式 |
| 呼び戻し方 | ダイヤル/メニュー/カスタムキー | [押す間カスタム設定呼出1〜3]を割り当てたキー(C1〜C4 や AEL など) |
| 持続性 | 切り替えたら、その状態で撮り続ける | 押している間だけ。離すと元に戻る |
| 使える条件 | 撮影モードの種別による制限なし(呼び出し経路には条件あり) | 静止画撮影時、かつ撮影モードが P/A/S/M のときのみ |
「風景モード」「ポートレートモード」のように構えごと切り替えるのが MR、「鳥が飛び立った瞬間だけ高速連写と動体 AF に振る」ような一瞬の持ち替えがカスタム撮影設定登録です。
紛らわしいのですが、[押す間カスタム設定呼出1〜3]は物理ボタンの C1〜C4 とは別物です。前者は「割り当てられる機能(設定の保存枠)」が 3 つ、後者は「割り当て先のボタン」が 4 つ。番号も対応していないので、呼出 1 を C3 に割り当てても構いませんし、C ボタン以外(AEL など)にも割り当てられます。なお登録画面では[現在の設定を取り込む]を選ぶと、いまのカメラの設定をその番号にまとめて取り込めます。
なお「装着しているレンズやカメラの状態によっては、登録した設定にならない場合があります」という注意書きは、カスタム撮影設定登録の側にあるものです。MR の注記ではないので、混同しないようにしてください。
登録できないもの・呼び出し時の注意
ヘルプガイドが明示している制約は多くありませんが、知らないと戸惑うものが並んでいます。
登録できないもの
- プログラムシフトは登録できません
- カスタムキー設定は保存できません。ボタン配置まで MR で切り替えたい、という使い方はできません
なお「何が登録できるか」の網羅リストは公式には存在せず、ヘルプガイドは「実際の登録可能な項目は、本機のメニューで確認してください」と書いています。ネット上の項目リストは、鵜呑みにせず実機で確かめるのが安全です。
呼び出し時の注意
- 撮影に関する設定を行ったあとで呼び出すと、呼び出された値が優先されます。最初に行った設定が無効になる場合があるので、呼び出しは「先に」、微調整は「後で」が原則です
- 記録先スロットが切り換わる場合、モードダイヤルを 1/2 にしても、メモリーカードへの書き込みが完了するまでは撮影設定が変更されません。連写直後にダイヤルを回して「切り替わらない」と感じたら、書き込み待ちを疑ってください
まとめ
- α7R VI の MR は本体のみに 10 枠。系統(静止画/動画/S&Q/タイムラプス)ごとに独立
- メモリーカードへの登録(M1〜M4)は廃止。カードに持ち出すなら[設定の保存/読込]
- 登録は MENU →[撮影]→[撮影モード]→[MR 撮影設定登録]。タイトル入力(英数記号 9 文字)が必須ステップ
- ダイヤルで直接呼べるのは「1」「2」の 2 つ。MR3 以降は「✱」からメニュー、またはカスタムキーの[撮影モード切換]
- [MR 自動更新]は VI で増えた項目。[入]なら呼び出し中の変更が登録内容へ自動反映(初期値は[切])
- 保存先はタイトルではなく手順 5 の番号で決まる。既存の MR をベースに別枠を作るなら[MR 自動更新]は[切]に
- 露出モードは MR と同じ選択リストの排他項目。登録し直す以外に直す方法はない
- 編集は「直して同じ番号に再登録」。プログラムシフトとカスタムキー設定は登録対象外
V 以前の解説記事は枠の数も呼び出し方も違うので、VI ではヘルプガイドを一次情報として当たり直すのが結局は早道です。
参考
いずれも 2026 年 8 月 30 日時点の内容です。ヘルプガイドは本体ソフトウェアの更新にあわせて改訂されることがあります。
![α7R VI の MR 登録呼び出しの全体像。登録の 5 ステップ、保存先(4 系統それぞれに MR1〜MR10、カード登録は廃止)、呼び出しの 3 経路(モードダイヤル 1/2 は MR1・MR2 への近道、✱ からメニューで MR1〜MR10、カスタムキー)、そして [MR 自動更新]の入と切の違いを 1 枚にまとめた図](/blogs/images/sony-a7r-vi-mr-flow-1600.png)
