概要
設備保全の世界には BM(事後保全)→ TBM(時間基準保全)→ CBM(状態基準保全)→ PdM(予知保全) という高度化の流れが古くからある。IoT の価値は突き詰めると「壊れてから直す」から「壊れる前に予測する」への移行に集約されるため、設備メンテナンスの文脈では「何のデータが取れるか」より「どのレベルの保全をやるか」が最上位の問いになる。
つまり分類の主軸はデバイスではなく保全戦略の成熟度になる。「あると便利なセンサー」ではなく「保全戦略をどこまで高度化するか」がそのまま IoT の設計思想になる。
5 段のラダー
省エネ最適化まで含めて IoT の役割で描くと 5 段になる。段が上がるほど予測型に近づき、IoT の価値は特に L3〜L5 への移行に集中する。
| 段 | 保全方式 | 内容 |
|---|---|---|
| L1 遠隔見える化 | BM の高速化 | 「現地に行かないと状態が分からない」を解消。稼働状態・警報を遠隔把握し一次対応を早める。クラウドカメラで機械室や制御盤を遠隔目視、接点端子で既存設備の警報接点を拾う |
| L2 点検の省力化 | TBM の遠隔化 | 定期巡回・検針・法定点検を遠隔化・自動化。温湿度/CO2 センサーで常時記録、カメラで遠隔臨検。人手不足が深刻な業界では「巡回そのものを減らす」効果が大きい |
| L3 状態基準保全 (CBM) | しきい値監視 | 状態を常時センシングししきい値を超えたら保全する。回転機械の振動・温度、受変電の電流・電力。「時間が来たから交換」から「劣化が見えたから交換」へ |
| L4 予知保全 (PdM) | 分析・学習 | L3 で貯めたデータをクラウドで分析・学習し、故障の予兆や余寿命を予測する |
| L5 エネルギー最適化 | 省エネ/BEMS 連携 | 電力・熱の見える化と最適制御。設備を「壊さない」だけでなく「無駄なく動かす」領域 |
直交する 2 つの副軸
保全ラダーが主軸で、実際の設計はこれに 2 つの副軸を掛け合わせて具体化する。
- 設備カテゴリ軸: 空調熱源/給排水衛生/電気受変電/昇降機/防災
- 監視パラメータ軸: 振動・温度・電流電力・圧力・漏水・室内環境(CO2/温湿度)・開閉稼働
「昇降機の振動を L3(CBM) で見る」「受変電の電流を L4(PdM) に発展させる」のように、主軸×副軸で用途が一意に定まる。
実事例
- ダイキン「Kireiウォッチ」(L2) — 空調機器内部のドレンパン(結露受け皿)は従来おおよそ月1回、天井裏で汚れを目視点検する必要があった。機器内部に定点カメラを設置し SORACOM Air(セルラー Plan-01s LDV)で画像をクラウドへ送信、独自アルゴリズムで汚れ度合いを自動判定して清掃推奨時期を提示する。天井裏作業と日程調整の手間を削減
- キッツ(L4) — バルブメーカーが on/off 制御バルブの開閉動作データをセンサーで収集し、クラウド上で AI がスコア化。専任チームが毎日監視して予兆を診断しメンテナンス時期を通知。TBM から CBM へ転換し不要な交換の削減と部品の延命を実現。蓄積データは劣化プロセスの可視化を通じて製品開発にも還元
- SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron — 回転機械の状態を機械学習で監視し異常を自動検知する構成
公共インフラ側の位置づけ
国土交通省の「インフラ長寿命化計画」では、事後保全から予防保全への転換が国の基本方針として置かれている。地方公共団体への技術的・財政的支援があり、センサー・ロボット・非破壊検査等の新技術活用が明記されている(公共建築物・公営住宅・公園なども対象)。
導入の出発点
IoT を検討するなら、まず自社が保全ラダーのどの段にいて、次のどの段を目指すのかを見極める。ダイキンやキッツのように「保全方式そのものの転換」を目的に据えた導入が成果を出している。
関連ページ
- SORACOM — 接続・収集・導入の3レイヤと製品群
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ソース記事
- 建築設備メンテナンス視点で SORACOM の IoT を分類し直す — 保全高度化ラダーという第3の軸 — 2026-07-22
- 【2026年度版】設備保全IoTに使える補助金制度ガイド — 2026-07-22