概要
IoT 開発で定番の 5 種類のボードは、試作 ↔ 量産 と シンプル ↔ 高機能 の 2 軸で使い分けられる。多くは競合ではなく、同じチップを「むき出しで使うか、便利にパッケージして使うか」の違いだったり、通信手段の違いだったりする。
早見表
| 基板の種類 | 強み・特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| M5Stack | 画面・ケース付きで試作が最速 | 画面が必要な社内ツール、素早い試作 |
| Raspberry Pi | Linux が動き、高度な処理や AI が得意 | カメラ映像解析、ゲートウェイ化 |
| Arduino | 安価で省電力、拡張シールドが豊富 | 試作開発(PoC)、教育・実験 |
| ESP32 | 安価・小型でカスタマイズ性が高い | センサーデータ送信、量産製品への組み込み |
| Wio シリーズ | 最初から通信機能がついていて扱いやすい | 屋外や電波のない場所でのセンサー計測 |
ESP32 — IoT のハードルを下げたチップ
ESP32 は Espressif Systems が開発した Wi-Fi / Bluetooth 内蔵のマイコンチップ。開発ボードでよく見る**中央の銀色の四角いカバー(金属シールド)**の中にプロセッサと無線回路が入っている(電波を飛ばすアンテナはカバーの隣、基板の端)。
「最強」と呼ばれる理由は 3 つ。
- 通信機能が最初から全部入り — 従来の基本的なマイコン(Arduino Uno など)はネット接続に別売りの Wi-Fi パーツが必要だったが、ESP32 は Wi-Fi と Bluetooth (BLE) を内蔵しているので単体でデータを送れる
- 破壊的な安さ — チップ単体なら数百円、USB ポートとピン付きの初心者向け開発ボードでも 1,000〜2,000 円前後。「とりあえず試す」のコストがほぼゼロ
- 省電力 — 「ディープスリープ」で超省電力モードに入れる。「普段は眠らせ、1 時間に 1 回だけ起きてセンサー値を Wi-Fi で送り、また眠る」なら単三電池数本で数ヶ月〜数年動く
採用例は、Wi-Fi 対応スマートプラグやスマート電球などのスマートホーム家電(バラすと高い確率で Espressif 製 ESP8266 / ESP32 系が出てくる)、工場のデータ収集センサー、農業ハウスの温度監視や植物の自動給水といった自作 IoT。
ESP32 と M5Stack は入れ子
M5Stack のケースを開けると、中にはこの ESP32(またはその進化系チップ)がそのまま入っている。
- ESP32 単体 — チップ、またはそれに USB ポートとピンを付けた開発ボード。自分でセンサーを配線する。コストを極限まで抑えたい量産品や、小さく作りたいときに使う
- M5Stack — ESP32 の周りに「カラー液晶」「ボタン」「バッテリー」「ケース」を最初からセットにしてパッケージ化したもの
両者は競合ではないので、**「M5Stack で試作し、量産段階で ESP32 単体チップに置き換える」**という開発の流れが成り立つ。
通信手段の選択:セルラー直結 vs スマホ中継
Wi-Fi が届かない屋外では、Wio LTE のようなセルラー直結のほかに、スマホ中継によるクラウドソース測位(Apple「探す」/Google Find My Device / Find Hub のネットワークに相乗りする AirTag 方式)という選択肢がある。ESP32 でも自作可能。
| セルラー直結(Wio LTE 等) | スマホ中継(AirTag 方式) | |
|---|---|---|
| 消費電力・コスト | SIM + 通信料、電力も必要 | 超低消費電力、通信料ゼロ |
| 位置の更新 | リアルタイム・任意タイミング | 人(スマホ)が通ったときだけ |
| 圏外・無人地帯 | 電波があれば取得可 | 人がいない山奥・農地ではほぼ取れない |
| 送れるデータ | センサー値など任意 | 基本的に位置情報のみ |
無人地帯での定点計測やセンサー値の送信が要るならセルラー、人通りのある場所での紛失防止なら中継方式、という切り分けになる。
関連ページ
- ESP32 — チップ単体としての詳細
- SORACOM — LTE-M/NB-IoT 開発ボード Wio BG770A と接続サービス
- 予知保全と保全高度化ラダー — PoC から本番運用へ進む先の設計思想