概要
もともとは 1975 年にニューヨーク州ロチェスターのジョージ・イーストマン・ハウス国際写真美術館で開かれた写真展「New Topographics: Photographs of a Man-Altered Landscape」の名前。企画はキュレーターのウィリアム・ジェンキンス。宅地開発や産業で変貌する風景を、賛美も告発もせずニュートラルな視点で記録する態度が共通しており、そこから広がった風景写真の考え方も指す。
雄大な自然を讃える伝統的な風景写真とは正反対に、建売住宅の郊外、工業団地、モーテルといった誰も「絶景」と呼ばない場所を撮った。
詳細
参加した 9 組 10 名
| 写真家 | 主な被写体の例 |
|---|---|
| ロバート・アダムス | コロラド州の郊外の建売住宅 |
| ルイス・ボルツ | 南カリフォルニアの新しい工業団地 |
| ベルント&ヒラ・ベッヒャー | 給水塔・溶鉱炉などの産業建築 |
| ジョー・ディール | 開発中の住宅地 |
| フランク・ゴールケ | 穀物倉庫のある中西部の風景 |
| ニコラス・ニクソン | ボストン中心部の建物 |
| ジョン・ショット | ルート 66 沿いのモーテル |
| スティーブン・ショア | アメリカ各地の路上・街並み |
| ヘンリー・ウェッセル・ジュニア | アメリカ西部の日常的な風景 |
特にアダムスとボルツが「らしさ」の強い作家で、感覚をつかむならまずこの 2 人を見るのが近道。
何が新しかったのか
- 美・感情・意見を排した記録 — ジェンキンスは様式を「ニュートラル」と呼び、写真は「地勢的な状態にまで切り詰められ、大量の視覚情報を伝えながら、美・感情・意見を完全に避けている」とした。写真は何も語りかけず、何を読み取るかは見る側に委ねられる
- 大型カメラによる精密な描写 — 4×5 インチ以上のシートフィルムによる細部の情報量が「情報を伝える」性格と噛み合った
- 先行する流れ — 源流は 1966 年に同館で開かれた「社会的風景に向って(Toward a Social Landscape)」展。社会や日常への視線をさらに推し進めた
- ニューカラーとの関係 — ありふれた風景を主題にする点で同時代のニューカラーと共通。出品作の多くはモノクロだったが、ショアはカラーで出品し、両潮流の結節点になっている
その後の参照
1981 年に英アーノルフィニ・ギャラリーで再展示。2009〜2012 年にアメリカからオーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、スペインを巡回し、2010 年に Steidl から図録『New Topographics』が刊行された。日本では伊奈英次、小林のりお、柴田敏雄、畠山直哉らが影響を受けた写真家として挙げられる。
「自分に課すルール」としての実践
歴史写真家・広告写真家の小林幹幸さんは「撮影にルールはないが、写真にはルールがある」と書き、ニュー・トポグラフィックスを自分に課すルールにすることでかえって感覚的になれる、と述べる。制約が迷いを減らして集中を生む、という発想である。
作品「アイデンティティーズ、コバヤシを巡る旅」(2019 年)では、全国の「小林」と名のつく場所を 3 年かけて追い、ペンタックス 6×7・ネガカラー・パンフォーカスで、閉鎖したコンビニや交差点などを人を写さずに撮った。背景には SNS の「映えスポット」への集中があり、誰もが同じ絶景を目指す時代への対抗軸としての意味を持つ。
撮ってみるためのヒント
- アダムス、ボルツ、ショアの作品や 1975 年展の図録で距離感をつかむ
- 郊外の住宅地・駐車場・工場・閉店した店舗など身近な人工の風景を選ぶ
- 劇的なアングルや光を避け、正面から水平・垂直を意識する
- パンフォーカスで細部まで情報を残す
- テーマを決め、一貫したルールで撮り溜めたシリーズとして見せる
関連ページ
- ニューカラー(New Color) — 同時代のカラー写真の潮流。ショアで交差する
- 写真史の転換点 — 写真史全体の中での位置づけ
ソース記事
- ニュー・トポグラフィックスとは — 1975年、「人間に変えられた風景」を淡々と撮った写真史の転換点 — 2026-10-02
- ニューカラー — 1970年代アメリカでカラー写真が「芸術」になった瞬間 — 2026-08-23(ニューカラーとの違い)