概要
銘柄分類でつまずく最大の原因は、「グロース株かバリュー株か」を1本の軸だと思い込むことにある。実際には少なくとも5つの独立した軸があり、実務ではそれらを掛け算で使う。「シクリカルバリュー株」のような複合語は、異なる軸のラベルを2つ重ねたものだと理解すると混乱がなくなる。
5つの分類軸
| 軸 | 代表的なラベル |
|---|---|
| 投資スタイル | グロース株/バリュー株/クオリティ株 |
| 景気連動性 | シクリカル株/ディフェンシブ株 |
| 成長フェーズ | ピーター・リンチの6分類(低成長・優良・急成長・市況関連・業績回復・資産) |
| 企業規模 | 大型株/中型株/小型株 |
| テーマ・属性 | モメンタム株/高配当株/テーマ株 |
「シクリカルバリュー株」は、景気連動性の軸で シクリカル、投資スタイルの軸で バリュー という2つのラベルが重なった状態を指す。
シクリカルバリュー株とオペレーティング・レバレッジ
シクリカル株の V 字回復を生んでいる構造は オペレーティング・レバレッジである。固定費の比率が高い事業では、売上がわずかに戻るだけで利益が急激に増える。赤字の底で仕込む手法が成立するのはこのためだ。
このタイプで PER は機能しない。サイクルの底では利益がほぼゼロか赤字なので PER は無限大か算出不能になり、逆に景気のピークでは利益が最大化して PER が最も低く見える(=最も割高な局面で割安に見える)。代わりに PSR や PBR、サイクル上の位置そのもので判断する。
分類ごとに見るべき先行指標は違う
株価は業績に先行する。決算数値だけを追うとどの分類でも構造的に出遅れるため、分類ごとに「業績より先に動く変数」を特定する必要がある。
| 分類 | 転換をとらえる指標 |
|---|---|
| シクリカル | PMI、在庫循環図、商品価格・スプレッド、減産発表 |
| シクリカルバリュー | 上記+自社株買い・増配などの資本政策の変更 |
| バリュー | ROE / ROIC の改善トレンド、アクティビスト、TOB |
| グロース | 売上成長率の再加速、EPS 予想リビジョン、実質金利 |
| クオリティ/ディフェンシブ | 配当利回りと長期金利のスプレッド、値上げ後の数量、粗利率 |
| ターンアラウンド | 営業CF の黒字転換、有利子負債 / EBITDA、増資リスク |
| 資産株 | NAV 乖離、賃貸等不動産の時価開示、資産売却発表 |
| 小型株 | 出来高の底上げ、カバレッジ開始、指数採用 |
| モメンタム/テーマ | 相対強度、52週高値更新、信用残 |
バリュー株で特に重要なのはカタリスト分析で、これがバリュートラップ(安いまま放置される銘柄)との分水嶺になる。「安い」だけでは上がらず、「安い理由が消える」イベントが要る。
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